出汁スープカレー開発秘話

イタリアでの修行中の話だ。

星付きレストランのイタリア人シェフたちに出汁をひいて飲ませたことがあった。その時彼らは「なんだこの繊細でかつ味わい深いスープは…!」と驚嘆していた。この原体験から出汁は世界で戦える大きな武器となる日本文化だと確信した。

帰国し北海道に観光に来たとき、名物であるスープカレーを食べた。
第一印象として思ったのはスープカレーにはいろんな食材が入っているのに輸入の野菜ばかり盛り込まれているのが本州から来た僕には残念で納得いかなかった。お肉も輸入のお肉ばかり。北海道にはスープカレーを作るために必要な出汁も肉も野菜もすべて良い食材が揃っているのに。

このときイタリア時代の出汁の経験がリンクした。

僕のように、観光で北海道を訪れたならきっと何から何まで北海道で出来た1皿を食べたいはず。せっかくならその出汁から具材まですべてなにもかも北海道の食材でスープカレーを作ったら面白いのではないか!
そう思い、出汁スープカレーを開発することを決めた。

真昆布・利尻昆布・羅臼昆布など北海道は昆布の主産地だ。羅臼には北海道名物である鮭からつくる鮭節という特産品があった。これだけで大枠が出来上がる。
繊細で優しい味わいの鮭節に対して、力強い味わいを持つ羅臼昆布を合わせた。
するとお互いが相互補完の作用を担いとても味わい深い出汁が出来上がった。

スパイスと出汁の配合量に関しては1番頭を悩ませた。この2つは背反関係にある。スパイス感を強めたら出汁の旨さは死んでしまう。逆に出汁感を活かしすぎてしまえばカレーという食べ物の枠ではなくなる。両方ともに味わえるこの絶妙なバランスはこれらを合わせるタイミングや煮具合によっても変わるため試行錯誤を繰り返して完成させた。

肝心の野菜だが、当社には美味しい無農薬野菜が美瑛の自社農園にある。この野菜の美味しさを皆さんに体感してもらいたい。

メインの具材はどうしようか、せっかくなら鮭節と羅臼昆布の出汁に合う具材にしたい。
ならば肉ではなく絶対に魚だ。
せっかくなら淡白でなく味わい深さのある魚がいい。そんなとき北海道のスーパーマーケットにはカレイが沢山並んでいることを思い出した。本州とは比にならない陳列量で初めて見た時には驚いた記憶がある。

そうだ“カレーにカレイ”を入れよう!ダジャレにもなってて面白い!

どうせなら一夜干しでうまみがぎゅっと凝縮した宗八ガレイがよさそうだ。
そう思い立ち、おふざけ半分で試してみたところ、その味わいの深さに驚いた。カレイの身をほぐせばほぐすほどスープに旨味が流れだしどんどん味わいが増してゆく。

これは大発見だ!

ひと口目じゃなく、最後の最後が1番美味しくなるスープが出来上がる!
どうせならその特徴をもっと加速させたい。
味変として食べている最中に鮭節ととろろ昆布を入れてはどうだろうか。鮭節でとった出汁に鮭節をのせたご飯が合わないわけがない。とろろ昆布は関西のうどん文化から着想。繊細な出汁にとろろ昆布はよく合う。調べるまでもなく北海道には美味しいとろろ昆布が存在する。これらを途中追加すればますます味わいが深まってゆく。

ここまでこだわったなら、ご飯もオリジナリティを出そうか。多くの店がサフランライスを供する。サフランライスを日本風に置き換えたらそれは茶飯ではないか。ほうじ茶の香りならこの出汁に非常に合いそうだ。

そして出来上がったスープカレーは他店とは一線を画す和の良さを詰め込んだ北海道らしさ満点の一杯になった。あれを口にしても北海道。これを口にしても北海道。
こうして道産出汁と道産食材を最大限まで活かした出汁スープカレーが完成。

キャッチコピーは「カレーというよりお出汁です、」

一度食べた人にはよくわかっていただけるフレーズだろう。
北海道で道産食材を楽しむなら是非一度お試しいただきたい逸品だ。
食べてみたくなったのではないだろうか。興味抱いていただけたなら話のタネに是非狸小路1丁目へ足を運んでいただきたい。

新感覚の出汁スープカレーがあなたを待っている。